ミッション3『渚のパートナー』
第三回

海の水は思った以上に冷たかったため、暑さで火照った身体には格別な味の酒のようだった。この異常のような暑さでは、肌を露出した水着姿で浜辺にいるのは酷な話である。砂は熱を吸収して鉄板のように暑くなり、真っ白な砂に照り返す陽光は目を開けていられないほどに眩しい。だが、彼にとってはそれ以上に眩しく目に入ってくるものがあった。
「きゃっ、すっごく冷たいねー。気持ちーなん♪」
 水飛沫を上げながら海水に飛び込んだのは、大きなポニーテイルを作った少女――リスティである。子供のようにはしゃぎながら海水に浸かる仕草は、およそ自分より年上とは思えない仕草である。だが、彼――ギュゼフにとって、そんなことはどうでもいいことであった。確か、リスティは水泳が得意だったはずなので、こんな場所で水遊びなどせずとも十分に海を泳げるのではないかと言う疑問があったが、それ以上に疑問に思うことがある。今、彼が釘付けにされてしまっている物――リスティが身につけている水着であった。
「アンちゃん、一つだけ訊いてもいいですか?」
 とりあえず、本人に質問をしても良いかと確認してみる。もちろん、これだけでは何を質問するのか分からないために、ここで『ノー』と応える者はそうそういないだろう。相手がリスティならば、尚更である。彼女が何か疑問を思って深読みをするはずがないからだ。
「なーに?」
 水遊びをしていた動きを一時中断させて、リスティはギュゼフの方へと向き直る。浜辺に近い海水で遊んでいるために、浸かっているのは膝より下だけである。そのため、リスティの水着姿は完全にギュゼフの目に入ってくる。
「その水着、何ですか?」
 リスティの返事に対して、ギュゼフは浮かべた疑問符をそのまま言葉にする。特に何かを捻っている訳ではなく、本心からそう思うのだ。だが、そんなギュゼフのストレートな質問の意味が分からなかったらしく、リスティは小首をかしげて眉をひそめる。
「何って、なーに? あたしがいつも着てる水着だよん♪」
 彼女の口から出てきた『いつも着てる水着』と言う部分にギュゼフは自分の中で考えを巡らせる。すると、数秒も経たないうちにその結論が出たのである。 さすがのリスティでもそこまではボケをかまさないだろうと思いたいところだが、自分の出した答えは9割方正解だろう。口に出すのが怖かったが、意を決して頭の中に出た答えを口にする。
「いつもって言うのは……水泳教室の時に着てる、ってことですか?」
「うん!」
 ギュゼフの言葉に、リスティは満面の笑顔を浮かべながら力強く頷いた。返って来た応えは予想通りの言葉だったが、彼女の満面の笑みの前には、そんなことはどうでもいいと思いかけるギュゼフ。だが、こればかりはどうでもいいでは片付ける訳にはいかない。流石に、海に来て競泳用の水着を着用されるのはゴメンである。まさに、学生がスクール水着を海に着てくるのと同じようなものだ。
「そんなにはっきり頷かれても……。向こうに水着が売ってる場所があったから、せめて普通のを買いません?」
 先程、浜辺に来る前に見かけた水着ショップのことを頭に浮かべながら、ギュゼフはそんな提案を口にする。すると、リスティは何か不思議そうな顔をしながら小首を傾げる。
「ん〜、別にあたしはこれでもいいんだけど、何か変かなぁ?」
「いえ、別に変とかそう言うのではなくて……折角遊ぶんですから、水泳教室のものとは別のにしませんか? ほら、仕事と遊びは別物でしょう? それと同じようなものですよ……」
 リスティの疑問符を何とか取り払おうと努力するギュゼフだが、上手い言葉が浮かんできてはくれない。それでも何とか適当な言葉を見つけてリスティを説得してみる。リスティの単純な頭には、適当なことを言えば乗ってくれるだろうと予想してのことである。
「う〜ん、そうだね。教室の水着と遊びとは違うよね。ギュゼフも一緒に新しい水着選ぶの手伝って!」
 何とかリスティを説得することに成功したギュゼフは、まんまとリスティとショッピングすることにも成功したようだった。流石にそこまで考えていなかったギュゼフだったが、不幸中の幸いと言ったところだろうか。いや、個人的には不幸は何もないのだが。
 ギュゼフとリスティの二人は、K地区海岸のビーチで今まさに夏のバカンスを楽しもうとしていた。L地区支部のボスから貰ったパンフレットのホテルは、ギュゼフが想像を覆すものであり、ただ驚く以外になかった。しかし、ホテルの中に入って支配人の話を聞き終わった今となっては、その驚きも半減――いや、ゼロに近い。ボスに渡されたパンフレットのホテルは、実はB−FogのK地区支部のビルだったのだ。B−FogのK地区支部のボスであるミクトラス・シェルダンはこのホテルの経営者であるために、特別に無料でこのホテルを提供してくれたらしい。一瞬でもボスを尊敬しようと思ってしまった自分が悲しく思うギュゼフだった。
「ほら、ここにたくさん水着が売ってるから、適当に好きなのを選んでみてください」
 水着やらパラソルやら色々と便利道具が揃っているこの海の家は、この海岸の中では一番大きい建屋のようだった。造りこそ周りと同じ木製の建屋になっているのだが、品揃えや食堂の席の数は圧倒的だ。客の集まりもそこそこで、繁盛していると言っても間違いないほどの店のようである。
「うわぁ〜、いっぱいあるねー。こんなにあったら迷っちゃうよ!」
 リスティは数十種類の水着を見渡しながら、呆けたような表情を浮かべる。確かに、リスティでなくてもこの品揃えには驚かされることだろう。とは言え、その中でも自分に似合うものと言うのはそれほどあるものではなく、いくつかの中から絞っていけばそれほど迷わずとも選べると言うもの。
「アンちゃんは赤が好きだから、赤いのにする? あー、でも、赤い水着はちょっと派手かもしれませんね」
 ギュゼフは適当に促しながら、リスティに自分で水着を選ばせるように誘導する。本当ならば、リスティに着せてみたい水着を指名しても良かったのだが、さすがにそこまでの下心はギュゼフにはない。恐らく、ショウならばやっていたのだろうが。
「あー、これが可愛いかも。これかこっちのかなぁ」
 言いながら、リスティは数十種類の水着の中から数点好みのものを選んだようだった。これだけの数の中からこんな短時間で好みの水着を選ぶとは、意外とリスティは買い物上手なのかもしれない。通常ならば、これだけの数を相手に天秤を掛けて選定するのにそれなりの時間が掛かっても不思議ではないだろう。
「これよりはそっちの方が似合いそうですけどね。ちょっと地味かもしれないけど、アンちゃんにはこれぐらいが似合うと思いますよ」
 数種類の中から、ギュゼフなりにリスティに一番似合いそうな水着を選んでみる。赤が好きなだけあって赤い水着を選ぶかと思いきや、さすがにリスティ自身も赤い水着は派手と感じたのだろう。選んだ水着の中には赤系統の色は、薄いピンク色の水着一着しか入っていなかった。
その中から、ギュゼフはその薄いピンク色の水着を選んだようだった。理由は簡単で、それがワンピースだったからである。リスティの体型を考えると、この水着が一番しっくり来るだろう。
「でも、やっぱりそれはあんまり可愛くないかも。こっちの黒い方がいいな!」
 地味過ぎるところがあまり気に食わなかったのか、一度自分で目を付けておきながら軽く切り捨てるリスティ。そして選んだ水着は黒いタンキニの水着であった。左の胸元には赤いハートマークが入っているところがチャームポイントだろうか。パンツが紐なのか微妙に大胆に感じたのだが、今時これぐらいの水着ならば大人しい方なのだろう。周りの水着に目を通してみても、かなり際どい水着が存在しているようである。
「アンちゃんが気に入ったならそれが良いと思いますよ。それ買いましょうか……って言っても、店員が見当たらないようですが……?」
 言いながら、カウンターの前どころか店内にも店員がいないことに、今頃になって気付くギュゼフである。流石に売り場に誰もいないと言うのは無用心としか言いようがない。
「外にでもいるんでしょうか? まさか、店を空にしてどこかに行っているなんてことはないでしょうから……」
 ちょうど今は外にいるだけなのかもしれないと判断したギュゼフは、リスティにそう告げると店の外に行ってしまった。そんなギュゼフの後を追うように、リスティは数着の水着を抱えながら店の外へと出て行く。
「ねぇ、ギュゼフ。お店の人いたー?」
 外に出た瞬間に日差しの眩しさに視界をかばいつつ、リスティは間の抜けた声で質問を投げ掛ける。だが、ギュゼフの返事がするよりも早くリスティに棘のある言葉を投げてくる人物がいた。
「へーい、そこのかーのじょ。人の店の商品を勝手に持ち出しちゃぁいけねぇなぁ。勝手に商品を持ち出すような強盗には、天罰を喰らわせちゃるわ!」
 その声と同時に、振り向いたリスティの視界に真っ白なビーチバレー用のボールが飛び込んできた。もともと反射神経が良くない上に、この距離からではボールを避けきれる訳もなく、ビーチボールはリスティの顔面に直撃する――はずだった。だが、そのほんの一瞬前に、ギュゼフと言う壁によってビーチボールがリスティの顔面に直撃するのを免れる。
「私のアンちゃんに何をするんですか! 強盗だなんて人聞きの悪いこと言って。私たちはこの店の店員を探しているだけなんですよ!」
 強盗呼ばわりしたことに腹を立てているのではなく、リスティを狙ったことに腹を立てたギュゼフの形相は物凄かった。今、リスティを狙ってビーチボールを投げてきた男を完全に捉えて睨みつけていた。
「ふーん。悪事を働いたヤツはみんないーワケを言うもんだからねぇ。つまらねぇセリフが最後のセリフで悔しーだろっ!」
 だがしかし、そんなギュゼフの形相にも一切動じない男。それどころか、ギュゼフの言葉を言い訳だと勘違いしているようだった。
「いや、別に悔しくはないですけど、あなた人の話聞くつもりありますか?」
 そんな男に少々気落ちするギュゼフの表情は、半分呆れ顔になっていた。初対面ではあるが、この男には何を言ってもこちらの言葉が通じないのではないかと言う確信を持ってしまったからである。
「そーか。よっし分かった。僕はしーんせつだからねぇ。君にもチャンスを与えてしんぜようっ! この僕にビーチバレーでかーったら、今のことは海水に流してやろう!」
 案の定、ギュゼフの言葉が耳に入っていないのか、男は右の人差し指をギュゼフに差しながら、まるで挑戦状を突きつけるように言い放って来たのである――。

 何だか訳の分からないうちにビーチバレーをすることになってしまったギュゼフは、真っ白い砂浜に一人でダイブしていた。後ろには、自分の通うスイミングスクールの水着を纏ったリスティが口を開けたまま棒立ちしている。
「一体、どこをどう間違えて私は砂浜でダイブしてるんでしょうか?」
 応えを期待するのではなく、ほとんど独り言のようにつぶやくギュゼフの正面には、ネット越しに先ほどの男――怪しげなサングラスを掛けた男が立っていた。ビーチバレーと言うのは基本的に2対2で行うもので、この時代でもそれに変わりはない。ギュゼフのパートナーは当然リスティであって、怪しげなサングラスを掛けた男のパートナーは、妙に似合わないエプロンをつけた優男だった。その優男がつけているエプロンに、先ほどの海の家と同じ名前のロゴが入っていることは、とりあえず忘れることにする。
「おーもい知ったか、この強盗どもめ。悪事を働いた者の末路をとーくと味わうことが出来たんじゃねぇか?」
 怪しげなサングラスを掛けた男は、砂浜にダイブしているギュゼフを見下すように哄笑をあげる。これではどちらが悪事を働いているのか知れたものではない。ギュゼフは無言で立ち上がり、身体についた砂を払うと細い瞳を鋭く光らせた。
「生憎と、私は濡れ衣を着せられて黙っていられるタチではないものでね。アンちゃん。悪いけど、何もしないでそこで立っててくれませんか? 後は私一人でやりますから」
 形だけは2対2のビーチバレーをしていたのだが、リスティの運動神経でギュゼフのフォローが出来るはずもなく。リスティのフォローをするためにギュゼフがコートの中を走り回っているのでは、いくら何でも体力が持たない。それならば、始めからリスティには何もさせないで、全て自分で取ってしまえばことが足りてしまうのではないだろうか。そう閃いたのである。
「あーきらめの悪い強盗だな。そんな悪い子は、マドラーみたいに掻き混ぜちまうぜ。このゲーツ・マッドラーさまがよぉ〜っ! ひゃっほ〜っ!」
 ゲーツと名乗ったサングラスの男は、ノリノリに飛び跳ねてジャンプサーブを放つ。迫り来るビーチボールを、ギュゼフは上手い具合に腰を落として足を踏ん張る。足元が砂のためにバランスが悪いことを考慮して踏ん張らなければいけないのは一苦労だが、一人で全てのボールを受けなければいけないと思えば、これぐらいのことは大した障害にはならない。
「やれるものならば、やってみてもらいたいものですよ」
 ゲーツの渾身のサーブも難なく受けると、そのまま相手コートにボールを返す。ここで普通にレシーブをしたとしても、リスティが上手くトスをあげられるはずもないため、ただ返すだけになってしまうのは致し方がないことである。そもそも、リスティには端で立っているように命令をしたために、彼女がフォローに来ることはまずありえないのだが。
「そ〜ら、そらそら〜。ただ返すだけじゃオレたちには勝てないんだぜ〜」
 言いながらゲーツのパートナーである、海の家のロゴエプロンをつけた優男がレシーブをあげる。前半戦を見ていた限りでは、この優男は本当にただのパートナーなのだろう。ゲーツのビーチバレーの腕は駆け引きなしに上手いと言っても過言ではないが、この優男は初心者に近い腕前である。そこが、このコンビの弱点と言っても差し支えない。
「ひゃっほ〜っ! まーた砂浜にダイブしなぁっ!」
 優男があげたレシーブは、そのままツーアタックへと繋いでゲーツがスパイクを打ってくる。だが、そのことを完全に読んでいたギュゼフは、ネットの前で空高く飛び上がる。ギュゼフの長身に掛かれば、これぐらいのネットなど軽く頭が出せるほどまでジャンプすることが可能だ。ゲーツの放ったスパイクは、ギュゼフの作った壁によって難なく遮られてしまう。思わぬブロックによって自分のコートに落ちてきたビーチボールに飛びつく優男だったが、予想もしていなかったことのために、ボールに触ることなく派手に砂浜にダイブしてしまう。
「ダイブするのは、そちらの方ですよ。さぁ、反撃の狼煙があがりましたよ」
 優男が派手にダイブしたために砂が舞い上がり、まるで狼煙があがったかのような錯覚を見せる。
「すっごーい。ギュゼフカッコいいー!」
 今の見事なギュゼフのブロックを見たリスティは、一人飛び跳ねながら歓声をあげている。リスティにカッコいいなどと言われたために、少々背中がむず痒い気がしたが、今はそんな衝動に駆られている場合ではない。今の点数で初めてギュゼフたちが得点を入れたのであって、こちらが不利なことには何ら変わりはないのだから。
「ケイタス、しーっかりフォローしやがれ。てめぇがダイブしてどーする!」
 ゲーツは、未だに砂浜にダイブしている自分のパートナー――ケイタスに向けて罵声を投げる。たかだか一度失点したからと言って罵声を浴びせられては溜まったものではない。だが、ケイタスと呼ばれた優男はゆっくりと立ち上がりながら呆けた表情を浮かべるだけである。
「わりー。でもよー、今のは予想外だよ。まさか、お前のスパイクが返されるなんて思わねーもん」
 確かにケイタスの言う通りではある。ゲーツ自身もそれは認識していることであって、自信を持って放ったスパイクを返されたのは、彼の人生の中ではそう多くはないことである。
「おーもしれぇ。おーもしれぇじゃんか! 強盗のぶーんざいで、K地区ビーチバレー協会会長……の息子であるゲーツ・マッドラーさまのスパイクを返すとはなぁ!」
 いきり立つゲーツは、サングラスに手をやる。それを外すのかと息を呑んだギュゼフだったが、どうやら単にずれたサングラスを直しただけのようだった。
「別に、私はたんにブロックをしただけなんですけどね。そんなに褒められるようなことはしていないんですけど……」
 ギュゼフは肩をすくめながら一人ごちるが、ゲーツもケイタスもこちらを見てはいなかった。まるで作戦会議をするかのように二人で円陣を組んでいる。しばらくそれを無言で見つめていると、ようやく作戦会議が終了したようである。
「さぁ、かーかって来い。もうてめぇの技はみー切ったぁっ!」
 一体なにを見切ったのだか分からないが、とりあえずゲーツの言葉は無視することにする。ギュゼフは無言でビーチボールを携え、サーブの構えをする。わざとらしく物凄い気迫を見せ付けておきながら、なんでもないアンダーハンドサーブをしてみせる。
ヒョロヒョロと宙を舞うビーチボールは、ギリギリのところでネットを飛び越えて、相手コートの一番手前の砂浜に無音で落ちる。意表をついたギュゼフのサーブは、相手を全く反応させることなく点数を奪い取っていた。
「くーそぉ、こんなことぐらいで、この僕が敗れるものか! さぁ、来い! つーぎこそ受け止めてやる!」
 既に本来の目的を忘れているゲーツは、一人ビーチバレーに燃え上がっていた。
と、そんな燃え上がっているゲーツの背後に、一人の男が近づいてくるのがギュゼフの視界に入ってくる。また変な奴が増えるのだろうかと嫌な予感がするギュゼフだったが、どうやらそれは思い違いであるようだ。背後から現れた男は、ある意味ギュゼフにとっては救世主のような存在だったのである。
「おい、お前たち。俺がナンパをしている隙になんてことしているんだ。これから仕事をしなくてはいけないんだぞ。もう少し、B−Fogとしての自覚を持ったらどうなんだ?」
 言いながら現れた男は、自らB−Fogを名乗る。どう見てもネット越しの二人が同業者とは思い難いが、残念ながらギュゼフの聞き間違いではないようだ。なぜならば、目の前の二人の口から直接同業者である証を発せられてしまったのだから。
「あ、フェーサー班長。すーんません。ついビーチバレーになると我を忘れちまうんですよ。これ、僕の悪いクセだなぁ〜?」
 申し訳なさそうに頭を掻くゲーツの態度は、先ほどまでとは一転して弱気になっていた。フェーサーと呼ばれたこの男が班長であるからに違いないのだろうが、それにしてもこの変わりようは見ていて腹立たしい。
「ケイタス、お前も仕事までの時間は店番をしていなければ駄目だといつも言っているだろ? ボスに言いつけるぞ?」
「あう。とーちゃんにだけは言いつけないで下さいよー。また小遣い減らされちゃう」
 ケイタスもゲーツ同様に、ギュゼフと接する時の態度とは一転している。地区の班長相手なのだから当然の態度なのだろうが、自分の地区とはまた違った雰囲気に戸惑うしかないギュゼフである。
「そう言うワケで、遠路遥々ご苦労。L地区支部である君たちを待っていた。私はK地区支部の班長を任されているフェーサー・サキタだ。それでは、早速仕事の話に移ろうか――」
 フェーサーと名乗ったK地区の班長の唐突な切り出しに、ギュゼフは空いた口が塞がらずに、ただ呆然と砂浜に立ち尽くすだけだった。

     

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