ミッション5 『遊園施設爆破事件』
第三回

 3つに分かれたB-Fogの面々は、それぞれの場所に分かれて爆弾捜索活動を再開していた。ダグラスのチーム分けにより”捜索班2”と命名されたショウの班は、まずは遊園施設の駐車場付近の捜索をしている。爆弾を設置した犯人の予告状によれば、全ての爆弾は時限装置付きなのだと言う。その全ての爆弾はそれぞれ違う時間に爆発するように設置してあり、数回に分けて騒ぎを起こさせようと言う意図が読み取る事が出来る。
「けっ、それにしても、何で俺がこいつと一緒なんだ? どうだい、ねぇちゃん。こんなヤツほっといて、二人でデートでもしながら捜索活動とシャレこもうじゃねぇかい?」
 そう言うショウの背中には、自分が邪魔者だと気付いていないとぼけたウインドが、何やら辺りをキョロキョロしている。そんなウインドの行動は、挙動不審者に見えなくもない。
「あなた、それ本気で言っているのだったら、わたし、容赦しないよ?」
 まるで捜索活動をする気のないショウに口説かれた女性――警察隊のクィン・レイダーはキツイ目付きの通りの口調でまくし立ててくる。目付きが鋭く気の強そうな外見だが、美人に分類される顔立ちはショウの好みであると言えよう。年齢は不明だが、恐らくショウと同じ歳か、もしかしたら少し上なのかもしれない。危険物の取り扱いには詳しいらしく警察隊から派遣されてきたのだが、女性が危険物に詳しいと言うのは、あまり好ましい事ではない。もしもの時があったら、女性が即座に対応出来るとも思えないし、何よりもその身を危険に晒してしまうと思うと居た堪れない。
「おい、何かこっちでピコンピコン反応してるぜ!」
「わりぃが、俺は冗談は言わねぇ主義なんだ。本気も本気、マジってヤツだぜ?」
 ショウは先程よりもさらに女性――クィンとの距離を縮めると、得意そうに口説き始める。だが、そんなショウの口説きに応えるつもりは全くないらしく、クィンはゴソゴソと腰に付けてあるウェストポーチをあさり始めた。
「なぁ、聞いてるか? これすっげーよ。さっきよりもピカピカ点滅し始めてるぜ?」
 ウェストポーチをあさっていたクィンは、ようやく探していた物を発見したのか、キツイ目付きを少しだけ緩くして顔を輝かせて見せる。それはまるで、遊び道具を見つけた子供のような無邪気さを感じさせる。
「そうだ。そこのコーヒーカップに乗ろうじゃねぇかい? まぁ、目が回るかもしれねぇが、その時は俺が抱きかかえてやろうじゃねぇかい?」
 クィンが何を探し当てたのかは分からないが、ショウはさらに言い寄って来る。だが、そんなショウの余裕な態度がさらにクィンの心を不機嫌にしている事など、本人が知る良しもない。
「ねぇ、あそこに綺麗な女の人がいるけど、良いと思わない?」
 不意に、クィンがショウが向いているのとは反対方向を指差してみせる。そして、そんなクィンの言葉に反応しないショウではない。まるでその言葉にセンサーが働いたかの様に、ショウはクィンが指差した方に視線を向ける。その瞬間だった。バチンと言う大きな音と同時にショウの身体が前のめりによろける。流石に倒れるまでには至らなかったが、振り向きざまにショウの愚痴が飛んできた事は言うまでもない。
「けっ、何しやがるんだ。いてぇじゃねぇかい! って、ハリセンかよ!」
 そう。ショウがクィンに噛み付いて振り向いたと思ったら、彼女の手にはハリセンが握られていたのだ。それも、ただのハリセンではなく、どこからどう見ても手作りの木製のハリセンである。どうりで音と痛みが大きいはずである。そもそも、こんな物をどうやってウェストポーチに仕舞っていたのかが謎である。
「わたし、冗談と嘘を付く男は嫌いなの。あなたはどっちにも該当する、最悪な男だよ」
 こうまで正面から切り捨てられると、流石のショウもショックを受けてしまう。多少の事ではへこたれない自信はあるのだが、口説いた時に物理的な反論をしてきた女性は初めてである。
「なぁ、聞いてる? 何か、この機械、ビービー鳴りだして音が止まんないんだけど?」
 その時になって、ショウとクィンの二人がもう一人の存在に気が付いた。そう言えば、先程から何か耳障りな声が聞こえていたような気がしないでもない。それがもう一人の存在――ウインドのものだったとは思いもよらなかった。
「……えっと、あれだよあれ。けっ、頭叩かれて、名前忘れちまったじゃねぇかい。何だっけか?」
 クィンに力いっぱいハリセンで叩かれた後頭部を抑えながら、ショウはわざとらしく考える仕草をしてみせる。だが、実際に彼の名前が出てこないのは事実だったりもする。そもそも、ショウが女性以外の名前を覚えているはずもない。
「あなたは確か、I地区支部の……ウィードー、だったかな?」
 クィンは半ば自信がなさそうに小声で呟いてみせる。響きだけならば似ていなくもないのだが、呼ばれた本人にしては冗談ではない。本来ならばそう思うはずなのだろうが、ウインドの反応は少しばかり的外れな方向にいっていた。
「全く、叩かれたぐらいで忘れないでくれよ。B-Fog I地区支部の要。バビュッと仕事を解決、神風のウインドとは、オレの事さっ!」
 言いながら、その場で1回転して決めポーズを取ってみせる。どうやら、クィンが自分の名前を間違えた事はあまり気にしていないらしい。それどころか、ショウが言った言葉をそのまま鵜呑みにしているようだった。素直と言うかお人好しと言うか、はたまた阿呆と言うのか。
「お、おう。そうだよ思い出した。ウインドな、ウインド。で、そのウインドがどうかしたってのかい?」
 ショウにしては珍しく、多少引きつった表情で話を繰り出してみせる。だが、今の彼らの仕事を考えて見れば、ショウの質問はおかしな内容である。
「そうなんだよ! さっきから、これがビービー鳴って止まんないんだよ。どうにかならないのかなぁ?」
 言われて、ウインドが手にしているGPSナビに酷似した機械に視線を向ける。見た目、少し大きめのGPSナビにしか見えないが、実はこれはカバーで、中身は爆弾探知機だと言う事は、他の一般客には想像も出来ないだろう。
「けっ、そんなの見て分かんねぇのかい。センサーが反応してんだよ。この辺に、例の物があるって事じゃねぇのかい?」
 半ば呆れた口調で話すショウの表情は、文字通り脱力気味である。探知機が反応していると言う事は、その近くに目的物――即ち、爆弾が設置されていると言う事だ。素人ではないのだから、それぐらいの事が理解出来ないのだろうか。もしかしたら、このウインドと言う男は、自分が手にしている物は見た目通り、GPSナビと勘違いしているのだろうか。
「え、あー、そうなのか、これ。そうかそうか。だから反応してビコンビコン鳴ってるんだな」
 分かれば良い。ショウが大きく頷いてみせるが、次の瞬間にショウは地面に突っ伏しそうになる。
「で、これが鳴ってると一体何がどうなるんだ? こう言う機械って、オレ苦手なんだよなぁ」
 これである。もしかしたら、この男はただの機械音痴なのかもしれない。そうでもなければ、先程ダグラスに渡された時の説明を聞いていなかったとしか言いようがない。
「全く、本当にB-Fogってバカが多いんだ? 隊長が言っていたでしょ。目的物が近ければ近いほど、音が大きくなるんだって。ようは、バイオガン感知機と同じような原理だって」
 クィンの説明にもいまいちである。何を言っているのか理解出来ないとでも言わんばかりに、表情を可笑しな形に曲げている。
「けっ、面倒かけさせねぇでくれねぇかい? 貸してみな」
 とうとう、ウインドには付き合いきれなくなったのか、ショウは舌打ちした後にGPSナビに酷似した小型機械を奪い取るように鷲掴みする。そして、一度センサーに目をやった後、適当に周囲を見回してみる。それだけでおおよその見当がついたショウは、センサーから視線を外してからゆっくりと一直線に目的の方向に歩みを進めた。
「ま、こんなもんじゃねぇかい?」
 そして、駐車場の入り口――即ち、駐車場の料金支払機の裏側に、不自然なぐらい見える位置に怪しい時限装置が設置されていた。大きさこそ握り拳より少し大きいほどの為に、普通では見逃しがちだが、注意を払っていれば簡単に見つかる大きさでもある。
「あなた、意外とやるじゃん。ちょっと見直したかも」
 一瞬にして爆弾を発見したショウを前に、クィンが少しだけ胸をときめかせて見せるが、直ぐにそっぽを向いてしまう。決して本気で言っているのではなく、その場の雰囲気で口にしただけのようだ。
「おお、すっげーな! こんなに直ぐに見つかるなんて、キュピーンって閃いたのかよ?」
 まるで自分が爆弾を発見したかのように喜んではしゃぐウインドは無視して、ショウはクィンへと視線を向ける。
「けっ、これでクィンちゃんが爆弾解除して完了ってかい?」
 もともと、警察隊より派遣された女性二人は、時限爆弾を解除する為の協力者である。正直、女性にそんな危険な事をさせたくないのが本音だが、生憎とショウには爆弾の知識がない為、余計な事をして爆発を早めてしまったり、突然爆発させる訳にはいかない。あとは彼女に任せれば、問題なく自分達の役割は果たされる事だろう。
 それにしても、さすが高性能な爆弾探知機である。こんなにも簡単に爆弾が発見出来るとは思わなかった。ただ、設置されている方法が素人でも考えない様な方法だった事が気に掛かるところではある。
「けっ、しかしなんだ。機械の性能が良くっても、それを扱うヤツによっちゃ、宝の持ち腐れってヤツなのかねぇ」
 今回、この高性能な爆弾探知機さえあれば、自分達が参加する意味がないと、アドと同様の意見を持っていたショウだったが、満更自分達の参加が無意味ではなかった事を実感する。
「なぁなぁ、それにしても、すっげーよな。こんなに早くバビュって解決するなんてさ!」
 こんなヤツを目の前にしてしまえば、尚更の事である。ショウは、この場で何度目か分からない舌打ちをしたのだった――。

 一方、爆弾捜索兼不審人物捜索班になっているエドワード、ギュゼフ、シャーリーの3人は、放送施設の近くまでやってきていた。これだけ広い園内から数個の爆弾を見つけるのは容易い事ではないが、高性能な探知機のお陰で少しは苦労が減ってくれるだろう。幸い、放送施設の近くでセンサーが反応してくれた為、彼等の一つ目の目的は無事に解決しそうだった。
「この機械は素晴らしい。まさか、こんなにも簡単にセンサーが反応してくれるとは思いもよりませんでした」
 丁寧な口調の為、どうにも自分とキャラが被ってしまっている事を気にしながらも、ギュゼフはエドワードの言葉に無言で頷いてみせる。
確かに、こんなにも簡単にセンサーが反応する場所を発見出来るとは思っていなかった。親友であるウエストを疑う訳ではないが、半径100m以内に近づかない限り全く反応しないセンサーでは、大して役に立たないと思っていた。直径にしてみれば200mになるが、この大きな敷地内から考えればそれでも苦労する事には変わりはない。
「ま、何にしても、無事に発見出来たんだから、良しとしましょうか」
 ギュゼフは腕組みしながら一人で頷いてみせる。
「そうね。こんなに簡単に見つけられるなんて、思いもよらなかったわよね」
 丸メガネのふちに手をやりながら、シャーリーも頷いてみせる。今日の彼女は、いつも仕事の時に込んで着用する動きやすい服装とは違って、見た目が女性らしい可愛らしい格好をしている。迷彩柄のミニスカートなど、オフの時ぐらいしか着用する事のない物だ。これは、アサカと別れた事と、ディリーに言われた言葉の裏返しである事は言うまでもない。
「それでは、とっとと見つけて本部に戻る事にしますかね?」
 センサーが反応する方向へと歩みを進めたギュゼフだったが、淡々とした口調でエドワードが引き止める。
「いや、あとは私がやっておきましょう。それより、あなた達二人にはもう一つの任務を優先させて下さい。男女二人で行動すれば、少しでも敵の目を欺く事が出来るでしょう」
 エドワードの言っている意味が良く理解出来なかった為、足を止めたギュゼフは問い返してみせる。
「えっと、いまいち意味が分からないのですが?」
 口には出さないまでも、シャーリーもギュゼフと同様の事を感じているようだ。小首を傾げて不思議がる仕草が、歳相応の可愛らしさを見せている。
「おや、それは失礼しました。私の説明が悪かったのですか。もう一度言いますよ。爆弾は私が見つけて、回収しておきます。センサーの反応範囲内になりましたので、そう時間も掛からずに発見する事が出来るでしょう。その間に、お二人は不審人物の捜索活動を並行してもらえませんか? 二手に分かれれば、少しでも早く任務解決に繋がる事でしょう。
 丁寧すぎるエドワードの説明に、流石のギュゼフもシャーリーも言っている事の内容を理解するまでに辿り着く。だが、エドワードの言っている言葉の意味を理解するまでに、数秒の間が空いたのだった――。

 遊園施設。
普段の生活ならば、彼には何の関係のない場所。あるいは、今後一生行く可能性のない場所。そう考えていた彼は、何故か観覧車の前に立っていた。基本的に、遊園施設と言うのは男一人で来るような場所ではない為、彼――アドにとっては果てしなく無縁と言っても過言ではない。そんな彼だが、今は女性と一緒に観覧車の前に立っている。正確に言うならば、もう一人男がいるのだが、その男は良く言えば寡黙、悪く言えば無口な男だ。
 オルガン・ドゥーエ。I地区支部に補充要員として配属されたこの男、まだ言葉を交わした回数が少ない為に、性格どころか声ですらあまり把握出来ていない。補充要員として配属されたぐらいなのだから、少なくてもウインドよりは有能であって欲しいと願いたい。
「んで、もう一回訊いても良いか?」
 自分の肩ぐらいの身長の相手に、半ばどうでも良さそうに言葉を投げ掛ける。そんなアドの言葉に対して、その人物は甲高い声で精一杯に応えて来る。
「うん、いーよぉ。おにいさん、めっちゃあたしのタイプだからぁ、何でも言う事聞いてぇ、あ・げ・る♪」
 言いながら、膝を少し曲げて胸を前に押し出すようなポーズを取る。
今、アドはこの女性と二人――厳密には3人で、オルガンがすぐ横に無言で立っている――で観覧車の前に立っている。それほど大きい物ではないが、この辺りでは高い方に属するらしく、高さはおおよそ100mぐらいはありそうだ。搭乗時間にしても15分はありそうなもので、仮に恋人同士で乗ったならば、二人だけの時間を過ごすには十分な時間なのかもしれない。
しかし、生憎と今は仕事中である。加えて、アドは基本的に女性を好きではない。自分の目の前にいる警察隊の女性――イリーナ・マッケンジーも、見た目だけならば可愛い系に属するのだろうか。世間一般では見た目だけならばモテそうな感じがしないでもない。
「オレはなんで、こんな場所に立ってんだ?」
 セクシーなポーズをとっているつもりなのだろうか。イリーナはいちいちアドに身体ごと迫ってくるようなポーズで話し掛けて来る為、はっきり言って鬱陶しいの一言だ。
「それはぁ、あたしがぁ、おにいさんの事気に入ったからぁ、一緒に乗りたいって思ったの。きゃはっ♪」
 いちいちポーズを取るイリーナに、アドは背筋が凍る思いだった。ただでさえ女性が好きではないと言うのに、このイリーナは特にアドの好きではないタイプのようだ。だが、この際、今はそんな事はどうでも言い。一番問題なのは、何故自分がイリーナと一緒に観覧車に乗らなければならないか、と言う事だ。アドの記憶が間違っていなければ、確かイリーナは警察隊が派遣した爆弾処理のプロのはずである。しかしどうだろうか。イリーナのこのポーズと性格を目の当たりにして、それを信じろと言う方がおかしな話だ。
「オレを誰だと思ってんだ。んな理由でこんなもんに乗れっかよ。観覧車の頂上に爆弾が設置してあるとか言うんなら、まだ話は分かるっての」
 言いながら、アドはGPSナビの形のカバーをつけた爆弾探知機を観覧車に向けてかざしてみせる。これで反応するものならば、笑い話にしかならない。確か、センサーは半径100m内に爆発物が存在すれば反応するようになっているはずなので、観覧車の高さを考えればギリギリ範囲内である。
「んな都合の良い話……」
 アドは肩をすくませて溜め息をつこうとしたその時だった。アドが手にした探知機がある反応を示したのである。その反応に対して、アドは冷静だった。まず、上にかざした手をゆっくりと下げてみる。すると、手にしたセンサーからは反応が消えてしまった。そして、もう一度手を上にかざしてみる。するとどうだろうか。手にしたセンサーは、先程と同じように反応するではないか。
「ま、たまにはこんな事があっても良いかもしんねーな。つー事だ、観覧車に乗んぞ」
 結論から言うと、八割がた爆弾は観覧車の上部に設置してありそうだった。そうでもなければ、上に手をかざしただけで、センサーに反応するのはおかしな話だ。この辺りの遊園アトラクションは高さを利用した物はほとんど存在しない為、この観覧車に爆弾が設置してあると考えるのが妥当である。
「え、マジでぇ。やったぁ。あたしの想いが通じたのねぇ。おにいさん、大好きっ♪」
 何を勘違いしているのか、イリーナは一人で喜びながらアドに抱きつこうとしてくる。だが、アドは寸でのところでイリーナを避けて、難なく危険から退避する。
「お前と乗るとは言ってねーっての。って、言っても、なぁ……」
 正直、イリーナと二人きりで観覧車に乗る気はない。かと言って、オルガンと男二人で観覧車に乗るのは不自然だし、気が引けるのが正直な所だ。そんなオルガンの様子を窺うべくそちらに視線を向けるが、寡黙なその男はアドの方を見て少しニヤけているだけで、妙に気持ちが悪い。どうやら、無口なだけで表情は普通に変化するらしい。
「くそっ、仕方ねーからお前と一緒に乗ってやるよ。その代わり、仕事の邪魔だけはすんじゃねーぞ!」
 言うが早いか、アドは仕方なくイリーナの手をとって観覧車の方に駆け込む。そのまま、並んでいる列を割り込んで一気にゴンドラの中に入り込んでしまった。
「おっと、割り込んですまねー。ちと、先に乗らせてくれよ」
 途中、順番待ちしていたカップルに当たってイリーナの手を離してしまったが、即座に手を掴んで力づくで身体を引っ張って引き寄せた。以外と軽く引き寄せられる事から、イリーナの身体が華奢である事が分かる。考えてもみれば、イリーナの身長はリスティと同じかもしかしたら低いのかもしれない。それを考えれば、この軽さはさして訝る事ではない。
「ったく、んで、オレがこんな思いして観覧車に乗んなきゃなんねーんだっての」
 愚痴りながら観覧車に乗り込んだアドは、次の瞬間に絶句してしまった。
「って、リスティ! んでこんなとこに!」
 そう。観覧車の中には、先程手を取ったはずのイリーナではなく、休暇中で今回の仕事には参加していないリスティだったのである――。

      

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