ミッション5 『遊園施設爆破事件』
第五回

「つー訳で、回収した爆弾は時限装置もなんもついてなかったぜ? 何の為に一人スリルを味わったのか分かんねーぜ」
 大袈裟に肩をすくませたのは、言うまでもなくアドである。観覧車の主柱に設置してあった爆弾を回収する為、ワイヤーを使って危険な目に晒した割には、あまり良い成果だったとは言い難いのかもしれない。結果的に爆弾を回収出来たと言う意味では、何も言う事はないのだろうが。
「レオンブルーくんの所もそうでしたか。実は、私の回収した物も同じような代物でした」
 そんなアドに反応したのはI地区支部の班長代理であるエドワードだった。こちらはアドとは正反対の反応を示しており、少しばかり困り果てた顔をしている。
「途中から別行動を取ってもらったバーンくんとハウトくんの二人も、結局、何の手がかりも見つける事が出来ませんでしたから尚更ですよ」
 エドワードの班は、爆弾捜索とは別に犯人が潜んでいる可能性がある為、その捜索も兼ねていた。その任務についてはギュゼフとシャーリーに任せたらしい。爆弾を回収出来たのは良かったとしても、もう一つの任務を全うする事が出来なかったのはエドワードとしては残念でならないようだ。新任の班長代理として、少しでも成果をあげたいのかもしれないが、少しばかり頑張り過ぎのような気がしてならない。
「ま、爆弾を発見出来ただけ良いんじゃねーか? んで、そっちで話を聞いてないヤツは何か言う事はねーのかよ?」
 頑張り過ぎなエドワードに対して、軽く宥めるアドであるが、彼がそんな気を使うのは珍しいのかもしれない。真面目そうな性格のエドワードには、あまり悩んでも仕方がない事を教えたいのが本音なのだろうが。
「そいつぁ良かった。んじゃ、あとで二人で観覧車に乗るって事で決定じゃねぇかい?」
 アドやエドワードの爆弾回収報告を全く聞いていない人物――ショウは、懲りずに警察隊の女性を口説いていた。同じ班だったクィンにはふられたのか、目標を変えてアドと同じ班だったイリーナにターゲットを置いたようだ。アドの事を気に入ったようだったイリーナだが、どうやらショウに対しても満更でもない反応を見せている。もしかしたら、単に男ならば誰でも良い可能性がある。そうでもなければ、ショウがナンパに成功するとも思えない。
「どうしてうちの班はこんなのばっかりなんだろうね。もう一人のウイ……何とかも訳分かんないし。ホント最悪」
 先程までは自分を口説こうとしていたショウが、直ぐにターゲットを変えている事に溜め息を付くのはクィンである。アド、エドワードと同じように無事に爆弾を回収したショウ班は、警察隊である彼女が解除作業を行っていた。何故か、彼女が回収した物だけが時限装置付きだったと言う。これだけが何故時限装置付きだったのかは分からないが、警察隊である彼女がいる場所で発見出来たのは幸いな事である。これが仮に、アドが発見した爆弾が時限装置付きであったならば、簡単に外せたとは思いがたい。
「そー言えば、おにいさんが見つけた爆弾、時限装置付きじゃなかったから良かったけど、もし時限装置付きだったらどうやって解除するつもりだったの?」
 ショウにナンパされていたと思ったのもつかの間、イリーナは思い出したように疑問符を投げ掛ける。
「オレを誰だと思ってんだ。そんなん、その時に考えるだけだっての」
 結果論としてのアドの発言だったが、実際のところ時限装置の解除は出来なかった事は間違いなのだろう。あの時はそこまで頭が回っていなかったのが正直な所だ。突然、リスティと遭遇すると言うアクシデントがなければ、もう少し冷静に考えられたのかもしれないのだが。
「なんでも良いけど、残りの爆弾はあと一つなんでしょ? 早めに回収した方が良いんじゃないかしら?」
「そうですね。私も彼女の意見に賛同します。残り一つが時限爆弾である可能性だってあるんですよ?」
 どうも真剣さに欠けるやり取りをするアド達に、シャーリーが冷静な言葉を投げて来る。そんなシャーリーの意見に頷いたのはギュゼフである。どうにも先程からこの二人がくっついているように見えるのだが、それはアドの気の所為ではないだろう。一体何があったのかは分からないが、この仕事中に二人に何かが起きた事は間違いない。
「その事だが、今、フェイズィラボに連絡して、最新鋭の爆弾探知機をこちらに発送してもらっている。それが届き次第、捜索を再開予定だ」
 先程からずっと無言でいたダグラスが、一つ咳払いをした後に胸を張る。もともと身体つきが良いだけに、こうして堂々とした態度を取ると妙に迫力がある。常に構えているような彼の風体は、まさに警察隊を仕切るに相応しいのかもしれない。
「って、これが最新型って言ってたじゃねーかよ? これでも見つかんねーのに、他のだって無理なんじゃねーのか?」
 アドの言う事は最もだ。彼らが使用した3つの爆弾探知機は、ウエストの両親が製作した最新型の装置のはずである。それでも見つける事が出来ないと言うのに、他の物を用意したところで無駄足なのではと考えるのは当然だ。
「いえ、この3つは試作品なんです。最新型の物はもっと探索範囲が広くて、更に高度な周波数を有する物で、障害物をも物ともしない最新鋭の装置なんです」
 淡々と話しをするウエストの言っている意味がどうにも理解し難かったが、ようするに今使用している物は試作品だったと言う事だけは理解出来た。
「けっ、なら始めからそれを用意すれば良かったんじゃねぇのかい? そうすりゃ、俺たちだってこんな無駄な事しなくて済んだんじゃねぇかい? 全く、観覧車に何回乗れた事か」
 論点がずれている気がしたが、ショウの言っている事は間違ってはいない。そんな高性能な物があるのならば、始めから用意してもらいたいものだ。
「ま、それがフェイズらしいと言えばらしいですけど……」
 ウエストの事を良く知る友人は、開き直ったようにうな垂れるのであった――。

 一時間後。フェイズィラボから発送された”最新鋭”の爆弾探知機がヘッダーアミューズの警察隊詰め所に到着した。直にこの施設の営業が終わる時間帯。爆弾犯の警告が正しいのならば、どこかに設置されている残り1つの爆弾には時限装置が仕掛けられているはずだ。ただ、既に発見された4つの爆弾には時限装置が仕掛けられてはいなかった。確率からして、残りの1つにも時限装置が仕掛けられている可能性が極めて低いが、いつ爆発するのかでさえ予測がつかない以上、用心するに越した事はない。
 爆弾探知機が到着してから、早速探知を開始したところ、ほんの数秒で爆弾の在り処を発見する事に成功した。真っ先に文句を言うアドを無視したウエストは、警察隊隊長であるダグラスに指示を煽り、最後の爆弾回収作業を行う事になった。
なんとも、最後の爆弾が設置されている場所は”お化け屋敷”の中だったのだ。今まで発見された爆弾は全て、屋外に設置されていた為に発見出来たのだが、最後の1つだけは屋内に設置されていた為に、センサーに反応しなかったと言う事だ。
「にしても、営業が終わったお化け屋敷ほど、怖くねーもんなはねーよな。ま、もともと、んなもん怖かねーけどな」
 遊園施設の営業が終わり、お化け屋敷を含む全施設には一般客の姿はない。その為に、無駄な電力を使用しない為に遊園施設内のほとんどの電源が切られている。このお化け屋敷も、天井に設置してある薄暗い電灯以外は全て電源が切られている。その為に、普段電動で動いている”幽霊”たちは置き物のように微動だにしない。
「ここ、普通の電灯は点かないんでしょうかね? こんなに暗くては、視界が悪くて探し物も見つかりそうにないですよ」
 アドの愚痴に反応するように口を開いたのはギュゼフである。確かに、彼の言うように営業時間でもないのに暗くしている意味はないように感じられる。むしろ、少しでも早く爆弾を見つける為に、明るくしてもらいたいところである。
「それは仕方がありませんよ。ここは本来お化け屋敷なのですから、暗いのが当たり前の場所。そこに電灯などとは、お門違いとは思いませんか?」
 最もな意見を言うギュゼフに対して、エドワードが冷静に対応してみせる。大人を装っているギュゼフと違って、こちらは本当の大人の対応である。少しばかり考えの矛先が違っているように感じるのは気の所為ではないのだろうが。
「けっ、そんな事どうでもいいじゃねぇかい? ようは、爆弾を見つけりゃ良いんだろ? 高性能なセンサーのお陰で、アホでも見つけられるんだろ?」
 投げやりな言葉を口にするのは、言うまでもなくショウである。ここに来る前にダグラスとひと悶着あった後なだけに、機嫌は最悪のようだ。
 今、この場所にはアド、ショウ、ギュゼフ、エドワードの4人のみが爆弾回収の為にお化け屋敷に進入している。初めは、爆弾回収の為にイリーナかクィンを加えようと言う話もあったのだが、お化け屋敷の中と言う性質上、女性を同行させるのは好ましくないと言うダグラスの判断により、この4人が指名された。男は他にも2人いるのだが、適任ではないと判断したのだろう。このダグラスの判断は後にも先に正しかったと言えるのではないだろうか。
「ただし、あまり悠長な事はしていられません。早々に爆弾を発見して、外にいる警察隊の女性をここに呼ばなければいけないのですからね」
 爆弾探索隊と時限装置の解除作業を行う女性とは別行動を提案したのは、当然ダグラスである。いつ爆発するのか分からない以上、別行動をするのは適切ではないと指摘するショウの意見は、何事もなかったように聞き流されてしまった。これに腹を立てたショウは、ダグラスに思いつくだけの文句を良い放つのだが、無愛想な警察隊長は取り次ぐつもりは一切ないようだった。
「んで、センサーさんはどこら辺を指してんだ?」
 爆弾探知機はエドワードが持っている為、そちらに顔を向けながら確認をするアド。そんな彼の頭のてっぺんから生えている触覚は、今にも爆弾に反応しそうなほどに揺れ動いている。これは単に、アドが勢い良く振り返っただけに過ぎない為、実際に何かに反応して揺れ動いている訳ではない。
「けっ、そんなもんに頼らなくても、目の前に爆弾抱えてそうなヤツがいるじゃねぇかい?」
 アドの言葉に反応したのは、爆弾探知機を所持しているエドワードではなく、その後ろで不貞腐れた態度でそっぽを向いていたショウだった。『歩く弾薬庫』の異名を持つショウこそ、まさに爆弾を抱えた男と呼ぶに相応しいのかもしれないが、いくら何でも自分の事をそんな風に表現するとは思えない。アドがそう思った瞬間に、背後から殺気が生まれた。アドは反射的に身体を縮めたが、そんな縮めたアドの身体の直ぐ横を何かが擦り抜けた。
「犯人さんのお出ましってヤツか」
「そのようですね。ホントに待ちかねましたよ」
 アドとギュゼフがほぼ同時に口にした言葉は、背後に生まれた殺気に対する言葉だった。背後に生まれた殺気は言うまでもなく、爆弾犯の一味であり、脅迫状を出した張本人達である事はほぼ間違いないだろう。
「待ちなさい。あまり無益な殺生はしてはいけません」
 エドワードは身体を屈めて障害物の陰に身体を隠しながら、血気だった3人に制止の言葉を投げるが、この3人にそんな言葉が通じるはずもなかった。特に機嫌の悪いショウには馬の耳に念仏と言っても過言ではないだろう。
「たまには、こう言うのもやんねぇといけねぇんじゃねぇかい? 今日の俺は加減ってもんを知らねぇから、容赦しねぇぜ!」
 言うが早いか、ショウは相棒のコルトパイソンを構えて、先程射撃を行って来た爆弾犯に向けて射撃する。だが、暗闇の所為もあってか、ショウの放った弾丸は爆弾犯に命中した様子はない。辺りには火薬の匂いが充満するだけに終わった。
「けっ、隠れても無駄って事、教えてやろうじゃねぇかい」
 何かの影に身を潜めているだろう爆弾犯に、吐き捨てるように言うショウ。これではどちらが犯人なのか知れたものではない。当の本人にはそんな事は関係ないようで、爆弾犯が潜んでいるだろう場所の近くにもう一発銃弾をお見舞いする。
「そんな闇雲に撃っても、当たるものも当たりませんよ? 敵が頭を出したところを狙うのが得策でしょう」
 頭に血が上っているショウを宥めるギュゼフは、手にした二つの拳銃を構えて障害物に隠れている。こちらが何も攻撃を仕掛けて来ない事を悟った爆弾犯は、不意に物陰から姿を現して様子を窺ってくる。その隙をついたギュゼフの射撃が、爆弾犯の近くをかすめた。だが、命中には至らなかったようで、爆弾犯は驚いたように再び物陰に姿を隠してしまった。
「狙っても当たらねぇんじゃねぇかい? そもそも、こんな暗闇で当てようって方が無理な話じゃねぇかい?」
 自分の事を棚に上げて友人を嘲笑うショウ。考えて狙った分、ギュゼフの方が余程命中する確率が高いのだが、ショウにそんな理屈は通じないだろう。
 ショウたちがそんな事をしているうちにも、物陰に隠れた爆弾犯は一定の間隔で射撃を行ってきている。心なしか、ショウやギュゼフたちよりも射撃の精度が良いように思える。この二人は共に射撃の腕には自信があり、実際に実力も文句がないだろう。そんな二人ですらまともに狙いを定められないと言うのに、爆弾犯は正確な射撃をしてきているのはおかしな話である。
「どうやら爆弾犯はバイオガンを使用しているようです。暗闇でこれほどまで命中精度が高いとなると、そう考えるのが妥当でしょうね。先程から弾道が見えないのも頷ける話」
 先程から物陰に隠れて一発も射撃をしていないエドワードが、冷静に分析をしていた。どうやら、この男はこの二人よりも遥かに頭が冴えて物事を分析する力に長けているようだった。さすが班長代理を任されるだけの事はあると言う事なのだろう。
「んな事だろーと思って、こいつを持ってきといてせーかいだったな」
 いつもならば、ショウやギュゼフと一緒に射撃をしているはずのアドが、先程からずっと射撃を一度もしていないのには理由があったようだ。射撃をしていない間に、オプションを装着していたのである。
「暗闇が何だっての。オレにゃかんけーないってな!」
 アドの愛銃であるSOCOM-Mk23には、様々なオプションパーツを付けられる事で有名だった。その昔、ゲリラ戦を想定して製造されたと云われているこの銃は、重量や大きさに難があり常備銃としてはあまり褒められたものではないが、他分野に活躍出来ると言う意味では他の銃の群を抜いている。今アドが付けたオプションの『GPS付き赤外線スコープ』は、こんな暗闇の中でも抜群の命中率を誇る優れものだ。GPS機能を搭載している為、赤外線スコープを通してバイオガンや銃を所持した相手を自動感知してくれる。即ち、相手の位置が分からなくても、この機能によって相手の場所を的確に判断する事が出来る。
「隙だらけだっての。まずは一人。んなとこに隠れてても無駄だっての。二人目!」
 アドのセリフは言葉だけではなく、的確に的を射ている為に口先だけの自信家ではない。一瞬のうちに潜んでいたであろう全ての爆弾犯を一掃したアドは、物足りなそうに肩をすくめてみせる。
「オレを誰だと思ってんだ。もっと腕上げて出なおして来いっての」
 銃撃戦と言うにはお粗末過ぎる戦いの結末に、アドは一人呆れ顔である。バイオガンを所持して暗闇に潜んでいれば負けないとでも思っていたのだろう。こそこそ隠れて戦おうと思っている時点で、爆弾犯には勝ち目はなかったのだ。
「今回はレオンに完敗ですね。私も、こんな場面は想定していませんでしたよ。暗闇、ね。今度改造パーツを探さないといけなくなりましたよ」
 自分の銃に色々と手を加えているギュゼフだが、暗闇の戦いは想定外だったようで、今回の戦闘には今までの改造は役に立たなかった。その事が悔しかったのか、珍しく負けを認めるギュゼフの目は、敗者の目ではない。
「なんて事をしてくれたのですか。無駄な殺生はいけないと、言ったではありませんか」
 無事に爆弾犯を殲滅したと言うのに、エドワードの表情は不機嫌だった。
「いくら犯人と言えども、相手は私達と同じ人間なんですよ? それを、問答無用で殺してしまうなんて、相手の気持ちを考えた事はありますか?」
 エドワードの言っている事は分からないでもないが、戦場は遊び場ではないのだ。自分に銃口を向けてきている以上、そんな理屈が通じるはずはない。銃口を向けた相手に同情をしてしまった瞬間に、撃たれるのは自分の方なのだ。B-Fogと言う組織に身を置いている以上、そんな感情はなくしてもらいたいものである。
「なに、心配すんじゃねーよ。そいつら全員、死んじゃいねーっての。犯人には後でゆっくりと罰を受けてもらわねーとな。んな事より、早く爆弾の場所を探知した方が良くねーか?」
 余計な感情は捨てているが、アドとて人間である。無意味な殺生はしないに越した事はない。ましてや、相手がどう考えても素人だと分かっているのであれば、抵抗出来ないようにすれば十分である。そんな自分の考えが、いつか命取りになる事も承知の上だ。
「た、確かにまだ息があるようですね。気絶をさせただけですか。流石の腕前です。話に聞いていた以上の実力を持っていると言う事ですか」
 近くに転がっている爆弾犯の一人の脈を確認したエドワードは、アドに感心の眼差しを送る。さすがは班長に抜擢されるだけの器量を持っていると言う事なのだろうか。エドワードにとってアドとは、そんな存在に見えているようである。
「悔しいですけど、それがレオンの実力ですよ。ま、私も暗闇の戦闘を想定していれば、事前に装備を整えていたので――」
「けっ、そんなの何でも良いじゃねぇかい。俺はもう夜には戦わねぇだけだぜ」
 言いかけるギュゼフを遮るように言葉を口にするショウは、妙に消極的である。だが、口ではそう言っているくせに、内心はらわた煮えたぎっているに違いない。流石にギュゼフの様に新しい装備を付ける事はないだろうが、ショウはショウなりに他の方法で対抗する手段を見つける事だろう。
「爆弾は……その影のようです」
 高性能な爆弾探知機のお陰で、一瞬で爆弾の位置を発見する事に成功する。エドワードに言われるまま、物陰に隠れて設置してある爆弾を発見するアド。
「意外だな。こいつだけは時限装置付きみてーだぜ。時間は……まだ少し大丈夫みてーだ」
 設置してある爆弾を覗き見るアドは、その爆弾を一目で時限装置付きだと判別する。その理由は簡単で、爆弾本体と時限装置とが別々になっているのだ。それは有線コードで繋がっており、それが時限装置付きの爆弾だと判断するのを容易にしている。
「んなもんは、こうしちまえば、問題ねーぜ」
 言いながら、アドは有線コードを力いっぱいに引っ張って引きちぎってしまう。これで時限装置と爆弾本体が離れたので、時限装置を解除出来た事だろう。
「ま、こんなん何も怖がる事はなかったみてーだな」
 無事に時限装置を解除したアドは、再度肩をすくめてみせる。だが、次の瞬間に、その場に居合わせた者達の表情が一変したのである。
「ジゲンソウチサドウ。バクハツマデアト10プン」
 時限装置と爆弾とを結ぶ有線コードを引きちぎったはずなのに、爆弾側からはそんな警告を示す機械音声がこだましたのだった――。

      

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